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ウサギはBarに                    行けないちん。                         うんうん、                 行けないちんなぁ。


by anzou_s
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湯島天神さんの界隈に,30年前からずっと営業しているBarがあります。
細い路地にひっそり佇むドアの向こうは昭和の時代の古き良きBarそのまま。
私が生まれた年くらいには,あの場所で,あのマスターが,
毎夜美味しいカクテルを創ってきたんだなぁ。。と思うと,
カウンターに腰掛けた私がとても若輩者に思えてしまってちょっとばかり肩身が狭い。

初老の紳士。ロマンスグレーのオーナーは,白いバーコートを着ていた。
バーコートをはじめて見た私にとっては,病院の先生の白衣のようにも見えて
なんだか違和感がありました。なんとなく私の中でバーテンダーのイメージというのは
オールバックの髪に黒いベストに白いシャツ,蝶ネクタイみたいな感じがありまして。。。

しかしですね,噂に高いそのオーナーの手から作り出されるカクテルは絶品。
華やかな香りと色と。目で美味しい。舌で美味しい。
たった一杯のカクテルでいっぺんにこのお店が好きになってしまいました。

そうして飲んだアップル・カー。今日手にしたカクテルは世界で唯一のカクテル。
工場で大量生産されている飲み物とちがって一つ一つ人間が作っているわけですから,
全く同じものなんてできないと思うんですよね。
同じレシピでも作る人によって違ったり、同じ人が作っても
目分量の材料やその日のフルーツの状態なんかで味は毎度違うと思うんです。
だから今日この一杯はもう2度とは飲めない。
一杯のカクテルとの出会いは,大切にしたいですね。

私がEST!のカウンターに腰掛けて2杯目のカクテルを頂いている頃,
外で老紳士が3人,陽気な声で「EST!」と言いながらこの店に入ってきました。
彼等はカウンターに腰掛けるや,懐かしげに店内を見回していました。

「もう10年以上も前,ここに通っていたんだが私を覚えているかね?」

「ええ。もちろんですとも。」

「すっかり湯島も変わってしまって。ここを見つけたときは本当に嬉しかったよ」

「そうです。すっかり変わってしまいました・・・」

「ここだけが何も変わらないね・・・」

一人の老紳士はオーナーとそんな会話をしていました。
私はこんな良い歳のとりかたをしている老人に憧れました。
そうして3人分のマティーニが出来上がると,
老紳士たちは乾杯をし,たのしそうに昔話に花を咲かせていらっしゃいました。


≪アップル・カー≫
カルヴァドス40ml、コアントロー10ml、オレンジ果汁10ml、レモン果汁1tsp
# by anzou_s | 2004-08-11 15:48 | My favorite Bar